男性型脱毛症・若ハゲの原因

&円形脱毛症

 

これが「若ハゲ」の原因

昔からよく精力絶倫の人はハゲルなどといわれます。精力絶倫であることとハゲルこととは直接的には関係ありませんが、かといってまったく無関係ともいえないのです。

それを結びつけるのが男性ホルモン(テストステロン)です。テストステロンといいますと、聞いたことがあるなという方がいらっしゃると思いますが、オリンピックなどでよく話題に出るドーピング検査、この使用禁止となっている筋肉増強剤がテストステロンです。
女性にテストステロンを注射しますと、筋肉が男性化し強くなります。しかし、声が低くなり、そして脱毛するという副作用があります。テストステロンには頭髪を脱毛させる作用がもともとあるのです。

男性ホルモンが脱毛の原因であることを示す顕著な事例があります。
中国の王朝時代に宦官という役人がいましたが、この人たちは去勢されていました。彼らは子供のような声をして、髭もありませんでした。長い髪を結い、もちろんハゲの宦官などいませんでした。
つまり、男性ホルモンを分泌し精子を作る睾丸を取るとハゲないと言うことで、これを実験で確かめた研究もあります。

 

ハミルトンの実験

「ハミルトンの実験」(1942年、JB・ハミルトン、米)といわれるものがそれで、この実験では男性ホルモンがハゲの原因になるという次のような結果が導かれました。

   去勢された男性、つまり睾丸を摘出され男性ホルモンを作り出せなくなった人はハゲになることはなく、ハゲ進行中の人の睾丸を摘出すると、ハゲはそれ以上進行しない。

   ハゲ進行中に去勢され、進行が止まっていた人にテストステロを注射すると、再びハゲ始める。

   もともとハゲていなかった男性は、去勢されたあとテストステロンを注射してもハゲない。

ところが、この結果は、次のことを意味しています。

男性ホルモンはハゲになる要因になりますが、その分泌量が過剰だからといってハゲルのではなく、もうひとつ別の要因(受容体)がこの中間にあり、この要因がなければ、たとえ男性ホルモン過剰であってもハゲになりません。

▲最近の事例

俗に言う「ニューハーフ」の方にお聞きする機会が無いので残念ですが、「はげる前に睾丸を摘出するとそれ以上進行しない」かどうか、お聞きしたいと思っています。

最近、埼玉のある病院で女性の男性への性転換手術が行なわれていますが、その後の経過はプライバシーの問題があり、その後の報道はされていないようですが、アメリカの事例では、「男性化するために男性ホルモンを投与」した場合、見事に男性型脱毛症が起きていました。

つまり男性ホルモン過剰とその受容体(レセプター)が結びついて初めてハゲルわけで、この2つをもった人がハゲ体質ということになるのです。しかし、男性ホルモンの分泌が非常に多いことがハゲル第一の条件であることは間違いなく、最近の若ハゲの低年齢化も性的成熟の早さと相まっています。
特に大量の脱毛に悩む人たちの大半は20代前半です。その頃が男性にとって、もっと男性ホルモンの分泌量の多い時期であることから、男性ホルモンと脱毛のただならぬ関係が想像できます。
また女性がたとえ受容体(レセプター)をもっていてもハゲないのは、男性ホルモンが少なく、女性ホルモンとバランスがとれているからであって、閉経後ホルモンバランスが崩れ、脱毛が始まる女性がいますし、若い女性もさまざまな要因で(例えば過度のダイエットなど)ホルモンバランスが崩れますと、軽度の男性型若ハゲになります。

 

5?−リタクターゼの受容体(レセプター)要因説

男性ホルモンが毛根の毛母細胞に入りますと、毛根は細胞分裂をやめてしまいます。
しかし毛根に悪影響をおよぼす男性ホルモンは、睾丸で作られるテストステロンではなく、5?−ジヒドロテストステロン(5?−DHA)というさらに強力な男性ホルモンです。毛乳頭や皮脂腺には5?−リダクターゼという酵素が存在 し、この酵素の還元作用でテストステロンは5?ーDHAに変化するのです。

若い男性の睾丸ではどんどんテストステロンが作られます。これが毛乳頭と皮脂腺で多量の5?−DHAに変化し、毛母細胞に運ばれます。5?−DHAは毛母細胞が細胞分裂するときに起きるタンパク合成を邪魔し、別のタンパク合成を することにより、細胞分裂が止まってしまうのです。そのために早々と毛母と毛乳頭が離れてしまいます。
つまり、本来なら最低でも二年ある成長期が半年か一年で退縮期から休止期へと移行してしまうのです。

5?−DHAの悪さはこれだけではありません。休止期を過ぎれば新毛の発生となるわけですが、このする力すらなくなってしまいます。若ハゲの初期段階で、どうも最近髪の毛が細くなったなと感じるのは、まさしく5?−DHAにより毛母が弱ってきた兆候です。

次の段階では短い毛が抜けだすようになるわけですが、ここに来ると毛母は重体か危篤状態です。その後、地肌が見えだした段階では、すでに毛母は働きをやめてしまっている仮死状態です。多くの人は、地肌がすこし見え始めて、やっと ハゲるのではないかとあわてだすのですが、毛母のレベルで見ますと、もうここに至れば手遅れ状態ということがわかると思います。

いずれにしても、テストステロンが5?−リダクターゼの還元作用で5?−DHAに変化し、この5?−DHAが毛母細胞の細胞分裂を抑制するというのが、 男性ホルモン型脱毛の生理学的な仕組みです。そうすると、同じように多くの男性ホルモンが作られながら、ハゲる人とハゲない人との違いは、テストステロンを5?−DHAに変える5?−リダクターゼという物質の体内での生成量の違い ということになります。ハゲが遺伝するというのも、この5?ーリダクターゼが多く生成されるという体質が遺伝するということではないかと言われています。
この体質はもちろん女性にも遺伝します。しかし、女性がハゲない、または薄毛程度でとどまるのは、テストステロン分泌量が男性にくらべ極めて少ないからとされています。女性の男性ホルモン分泌量は男性の1/20ぐらいであり、こ の程度だとそれほど大きな脱毛に進まないのです。ところが男子を産むと、その子はしっかりとハゲの体質を受け継ぐことになります。   

なぜ5?ーリダクターゼが多い体質が作られるのか、どうしたらこの物質の体内生成を減らすことができるのか、これらのことが解明されれば、真の医学的なハゲ克服も夢ではありません。

 

男性ホルモンにはいくつかの種類があり、そのうちのテストステロンという男性ホルモンは5?−リダクターゼという酵素の働きで活性化し、より強力な男性ホルモンのジヒドロテストステロンに変化する

最近では、この5?−リダクターゼという酵素に2種類あることがわかってきました。

T型は陰毛、腋毛、ひげ、頭髪など、発毛部分に満遍なく存在していますが、
U型はひげと前頭部に集中して存在します。

ところが、ひげと前頭部の毛乳頭に共通するのは、男性ホルモンに極めて過敏に反応するということだけで、一方はひげを伸ばし、他方は脱毛の指令を出すのですから、その応答はまるで正反対です。

これは男性ホルモンのレセプターがジヒドロテストステロンを感知するところまでが共通であり、その先のメカニズムが違うためらしいです。
考えられることは、それぞれの毛乳頭で使われているたんばく合成の遺伝子が違うために

1. 前頭部の毛乳頭が毛の成長を阻害するようなサイン物質を出している

2. 前頭部の毛乳頭から放出される毛の成長をうながすサイン物質の放出が減る

このいずれかの事態が起こっていると考えられています。

特に前者の可能性は大きいです。ここまで、男性型脱毛症には、

1. 5?−リダクターゼによる男性ホルモンの活性化

2. レセプターによるジヒドロテストステロンの感受

3. 毛乳頭の脱毛サイン物質の放出

という三つのステップがあることがわかりました。男性型脱毛を抑える有力な考え方の一つに、どこかでこの流れを断ち切ってやればよい、というのがあります。

U型の5?−リダクターゼの働きを抑制することで男性型脱毛症が治ることは、実はフィナステライド(「プロベシア」)の作用がまさしくこれなのです。 
次に、男性ホルモンレセプターの活動を阻害して流れを断ち切る方法があります。あるアメリカの企業でこのタイプの薬(外用薬)の研究が実際に進んでいるといいます。
最後のステップである、毛乳頭が出す発毛サイン物質を直接育毛剤とすればいい、というアイデアで、毛乳頭が出すサインが何かを調べています。
活発に増殖している健康な毛乳頑細胞と男性型脱毛症の人の毛乳頭細胞をそれぞれ培養し、比較してみると、脱毛症の人の毛乳頭細胞は増殖速度が低いです。つまり、脱毛症の毛乳頭は、増殖を促進するような因子を出していないという可能性以上に、″細胞増殖を妨げる″ような何らかの物質を積極的に出している可能性が高いということです。

 

皮脂分泌過剰脱毛説(正しいシャンプーの重要性)

男性型脱毛の頭皮は、皮脂でベトベトになり、ギラギラしている場合が多く見られます。
こうした皮脂分泌の過剰が脱毛を促進しています。皮脂分泌の過剰は、皮脂腺内の5?ーリダクターゼとテストステロンが反応し、5?−DHAが活発に生成されると同時に起こります。(この5?−DHAが毛母の活動を抑制することは 説明しました)そして皮脂のベールは頭皮を完全に覆いつくします。特に毛穴のところでこびりつきます。そうすると毛根が酸欠状態になり、ケラチン層での硬化のための化学反応が抑制されます。
なぜなら、L−システィンがL−シスチンになるには、酸化という反応のために酸素を必要とします。そのとき血液中の酸素だけでは不足なので、頭皮よりの酸素供給が必要なのにもかかわらず、皮脂によって酸素が頭皮まで達しなくなるためです。こうして髪の毛の硬化が不十分となり、弱々しい毛になるのです。

また、皮脂過剰はもうひとつ悪さをします。頭皮表面の皮脂には、ほこりや細菌がこびりつきます。毛穴にこびりついた皮脂は簡単な洗髪では取れず、そこで細菌が繁殖します。この細菌のため頭皮や毛根が炎症を起こし、この炎症で毛母 が細胞分裂できなくなります。また頭皮上の皮脂は空気や光で酸化し、脂肪酸という毒素に変わってしまいます。この毒素も同じように頭皮や毛根の炎症の原因となります。この炎症は頭皮の血流にも影響し、栄養素が毛根に届かなくなります。
立毛筋付近の毛隆起に幹細胞という発毛に関わる重要な役割を果たす部分がありますが、皮脂分泌の過剰はこの部分にもダメージを与え、発毛の根を絶つとも言われています。皮脂過剰による脱毛が「脂漏性脱毛症」と特に名づけられるくらい、この皮脂過剰による頭皮や毛根への悪影響は大きく、むしろ5?−DH Aによる毛母抑制作用より脱毛への貢献は大きいのではないかという学者もいます。

現実問題として、毛穴に皮脂がこびりつくと育毛剤をつけても毛根に届かないわけですから、せっかくの治療も無駄になります。いかに皮脂分泌を抑えるか、毛穴の皮脂のこびりつきを取り除くか、これが脂漏性脱毛症克服のポイントとなります。

5?−DHAによる男性ホルモン型脱毛と脂漏性脱毛症は別個に考えるより、やはり同時に起きることがほとんどですから、相乗作用によって脱毛の進行を早めていると考えるべきでしょう。男性型脱毛で見られる頭皮の硬化、頭皮の低温化、毛細血管の血流不足は、これらの相乗作用の中での症状と言えるでしょう。

正常な頭皮

脂性の頭皮

乾性の頭皮

 

後天的な諸要因でもハゲル

男性型脱毛は遺伝するわけですが、では遺伝要素のない人はまったく安心なのでしょうか。
現実に親戚縁者に一人もハゲがいなかったのに、自分だけハゲ始めたという例はたくさんあります。遺伝的要素がないのにハゲルとすれば、後天的な要因でハゲ体質になったということです。

後天的な要因は、内因と外因の二つに分けられます。

内因とは、主に栄養が毛根に届かないために毛根の働きそのものが弱るケースです。どんな人でも毛根内にテストステロンも5?−リダクターゼも存在し、5?−DHAが作られるわけですが、その量がそれほど多くなく、毛母もしっかり活動しているかぎり、5?−DHAの影響を大して受けません。ところが、栄養補給が途絶えて毛母の活動が鈍ると、徐々に5?−DHAの影響が現われ、男性ホルモン型脱毛に移行していきます。食物の栄養バランスが悪い場合、消化器官や循環器官の働きが悪い場合、有害なものを日常的にとっている場合、何らかの原因で首や頭の血管が圧迫されて頭皮に血液が流れにくくなっている場合など、毛根の栄養障害が男性型脱毛の原因になります。

外因とは、粗悪なシャンプーやリンス、整髪料を使用している人、帽子やヘルメットを常時かぶっている人、髪をきつく縛っている人など、主に外部的要素を起因とする物です。結局これらも頭皮の炎症や血流障害の原因となり、毛根の活動抑制につながります。また、さまざまな生活上の問題がハゲを促進することもあります。たとえば睡眠不足、喫煙、ストレス、運動不足などは直接間接に毛根の活動抑制につながります。

 

O型、M型……それぞれのハゲ方と原因

若ハゲは頭頂部(つむじ)または前頭部()のいずれかから薄くなっていきます。
このことから、

頭頂部のハゲをO型

前頭部の特に剃り込み部分から後退するハゲをM型

前頭部中央から後退するハゲをA型またはU型

と分類することもあります。
もちろん、進行すると両方からハゲはじめて、ついには合体してしまいます。
なぜ同じ若ハゲでもこのようにハゲ方のタイプが異なるのか、その原因についてはまだよくわかっていません。人種の違いとハゲ方とは多少関連があるようで、欧米人(白人)にはM型、東洋人(黄色人種)にはO型やA型が多いようです。


ところで育毛剤の臨床テストなどの結果、頭頂部型と前頭部型とでは育毛剤の効き方が異なることが最近になってわかってきました。効き目が違うということは、このニつのハゲ方は原因が異なるということです。

 

 

円形脱毛症


 

若ハゲと並んで、発生頻度が非常に高い脱毛症で、老若男女の別なく、起こります

症状は、なんの前ぶれもなく、ある日突然、髪の毛がごっそりと抜けて、100円玉、500円玉ぐらいの丸いハゲが現われます。丸いといっても、まん丸ではなく楕円形のこともあります。
ほとんどの場合頭髪にできますが、眉毛、あごひげ、陰毛などにできることもあります。一般には、かゆみや痛みなどの前兆はありませんが、ある皮膚科のテキストには、「まれに、かゆみや赤みが出ることもある」と書かれています。
そのほかに、子どもの円形脱毛には、その75パーセントにアトピー性皮膚炎が合併していると報告され、大人の場合でも20パーセント程度この合併がみられるといわれています。
また神経質な人がかかりやすいともいわれ、乗り物酔いしやすい、頭が重い、肩こり、手足が冷えやすい、下痢しやすいなどの、自律神経失調を思わせる症状を訴えるケースもあります。


円形脱毛症の原因については、現在、まだ定説はないのですが、医学的には、自己免疫説、末梢神経異常説、自律神経異常説などの諸説があります。

自己免疫説は、円形脱毛で抜けた毛にはリンパ球が多く含まれているという事実から、なんらかの原因で自己免疫機能が働いて、毛髪や毛根を体外に追い出してしまうというものです。自己免疫疾患であるアトピー性皮膚炎の子どもなどに、円形脱毛症が起きやすいことはこのためという解釈をしています。

末梢神経異常説というのは、肩や首のこりや痛みを訴える円形脱毛症の人の治療で、首を支える僧帽筋の中の後頭神経に麻酔薬を注射すると、ハゲテいる部分の皮膚温が上がり回復が早くなったという報告から、首の神経の異常が円形脱毛と関連しているのではないかとの考えのものです。

自律神経異常説は、かなりの信憑性をもっていわれている説ですが、ストレスが過剰になると、二つの、自律神経のうらの交感神経が緊張して血管を収縮させるため、頭部への血流が悪くなり、毛根への栄養補給ができず仮死状態になり脱毛するというものです。

円形脱毛症は成長期毛性の脱毛ですが、抜けた毛根の特徴は栄養失調におちいった萎縮毛が多いことです。この萎縮毛は、毛根がちぢまったのではなく毛球が壊れたためにできるものです。これは自己免疫の異常で作られ、その形は干し大根のようです。

萎縮毛

休止期毛


また、円形脱毛症は単発型、多発型、多発融合型などのタイプに分類されます
脱毛の 所が一ヵ所のみの場合は単発性、数ヵ所なら多発性、また多数の病巣があり、それらが一部で融合しているものが多発融合型です。さらに悪性のものでは、頭部全体が脱毛してしまう全頭円形脱毛症や眉毛やまつ毛など体の、ほかの部分の毛も抜ける汎発性円形脱毛症に移行することもあります。


円形脱毛症の治療は、内服薬による全身治療と、脱毛部への局所治療があります。血管を拡張する作用がある薬やビタミンEなどで血流をよくしたり、ステロ イド剤の内服をしたりします。局所治療としては、ドライアイスを使った冷凍療法や、紫外線療法、スチーマーを利用した温熱療法などがあるほか、ステロイド剤を局部に塗布することで発毛を促す治療をしたりします。
軽度の円形脱毛症の場合は、育毛剤だけで改善することもあります。また、ストレス性の脱毛の場合は、ストレスが解消したり改善すると、自然治癒することもあります。

突然の脱毛はショックも大きく、何とか治したいという気持ちから、さまざまな治療にとびつきがちですが、まずは皮膚科で正しい診断を受け、医師の指示に従って適切な治療をすることが大切です。

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